5月14日(日)と15日(月)の午後1時から、アーティストトークがありました。
14日は良いお天気の日曜日とあって、30人以上の参加者。この日は屋外展示の、阿部典英さん、渡辺行夫さん、Kit_Aさん、上嶋秀俊さんの順で会場をまわりました。人数が多かったので室内には入らず、外でそれぞれの作品について一言解説をいただきました。
阿部典英さんは、巨大な作品がどのような構造で作られているのかの説明に加え、黒光りする表面を磨くのには「亀の子たわし」が最適なのだと実演。また表面の細かな模様はすべてご自分の指の跡だそうです。作品のタイトルに込められた意味なども語ってくださいました。
渡辺行夫さんは、地中にあって普段は人目につかない植物の根や、ミミズに着目した作品について、自然が地球にもたらす役割を知り、感謝する気持ちを失ったら私達の未来はないと話されました。厄介者の扱いのオオイタドリを素材に使っていることにも通じます。
雪解けとともに現れる壊れたロードコーンから、修復・リサイクルをテーマとしたアートを作ったKit_Aさん。直前に行われた「おしゃべりアート」の参加者から「コーンの並べ方は立入禁止という意味があるのか」という感想が出たことを受けて、「このコーンの本来の目的は、危険・立ち入るなというサインで、そこは悲しい場所だったりします。日常と非日常の境、結界という印象をもたれたのかと思いますね」と話されました。
上嶋秀俊さんが室内に展示したのは、やわらかな春の空気の中で広がっていく草花などのイメージでしたが、屋外展示は芝生の上に点在する凍った水のような作品。これらは東日本大震災の津波の映像から受けた恐ろしさ、地震が収まった後も続く不安を表しています。白くなだらかな曲面と、黒いギザギザした部分がひとつのパーツにあることが、のんびりした日常の中にある脅威を表しています。
15日は室内展示の森万喜子さん、福江悦子さんが登場。
森万喜子さんは、抽象的な作品の捉え方について「人間のもつ視覚、聴覚などは人によって差があります。ですから同じものを同じように見ているとは限らない」と自分がメガネを新調したときのエピソードを交えて話されました。「この展覧会には11人それぞれの表現したいことがあります。それをみて好きとか嫌いとか感じるのは自由で、人それぞれの感じ方表し方を共有できる場だといいなと思う」
福江悦子さんは木彫りの4作品について、展示品の角度を変えながら解説されました。女性の胸像『凍裂』は、制作中に作品がパン!と割れてしまった。でもその瞬間に完成形が見えた。そのように制作している過程で、その木がもっている性質、コブや亀裂などが自分に作用していくのが楽しみで、木彫の醍醐味だと感じると話されました。